社外取締役インタビュー

コーポレートガバナンスの実効性を支える社外取締役へのインタビューをご紹介します。

 

    

取締役議長へのインタビュー

  

加藤 泰彦

  

役 職:取締役議長、hhcガバナンス委員会委員長、社外取締役独立委員会委員

兼務職:株式会社三井E&Sホールディングス特別顧問 

   

  • 取締役会の2019年度の成果と、2020年度の課題認識について聞かせてください。

    指名委員会等設置会社である当社取締役会の重要な役割は、執行役の意思決定のプロセスの適正性や効率性の検証を行い、業績を評価して経営の妥当性や透明性を確保することにあります。このため、取締役会においては、多様なバックグラウンドを有する取締役が、それぞれの経験や専門性を活かした発言を行い、非常に活発な議論が行われています。今後も、議長として、取締役が積極的に議論できるように様々な工夫を行ってまいります。

    2019年度における取締役会の活動とその成果を集約すると、「中長期的な経営課題やリスクを適宜、議題として取り上げ、取締役会の重要な役割である経営の監督機能の発揮に努めた」と言えます。取締役会の議題も、リスクに関連するテーマを中心に設定しました。例えば、認知症治療薬と抗がん剤の開発における競合状況を含む現状と課題に関する報告や、有価証券報告書における「事業等のリスク」等の開示事項に関する報告とディスカッションが挙げられます。取締役会が積極的にリスクに関する報告を執行役に求め、執行役の四半期業務執行報告もリスクとその対応策に焦点を当てた内容を中心にコンパクトにまとめられ、リスクを見える形にし、健全なリスク管理の習慣を根付かせることにつなげました。

    また、社外取締役の活動として、前年度に引き続き50名を超える機関投資家等の皆様との意見交換会の開催、個別訪問による意見交換など、投資家の皆様とのエンゲージメントに取り組みました。社内においては、研究所、工場、営業の第一線を訪問し、従業員とのエンゲージメントにも取り組みました。

    2020年度の取締役会の課題としては、「EWAY 2025」の達成に必要なデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みに対するモニタリングをはじめ、COVID-19後を含めた経営を取り巻く環境変化の把握とその対応、守りにとどまらない攻めのリスクマネジメントの推進等があります。今後も、社外取締役がリーダーシップを発揮して、企業価値の向上を図り、ステークホルダーの皆様のご期待に応えてまいります。

  • hhcガバナンス委員会が発足した経緯と、この委員会の役割や今後の取組みについて聞かせてください。

    当社はコーポレートガバナンスの先進的な企業であるとの評価を受けていますが、その特徴の一つが「社外取締役ミーティング」でした。「社外取締役ミーティング」は社外取締役間の相互理解の場として2008年にスタートしました。その後、CEOのサクセッションプランの情報共有と検討、取締役会の実効性評価の取りまとめ、および患者様、投資家の皆様、従業員等のステークホルダーの皆様との対話など、当社のコーポレートガバナンスの継続的な充実において重要な役割を担ってきました。

    一方、東証のコーポレートガバナンス・コードの制定後、国内各社はスピード感をもってガバナンスの充実に努めており、今後も当社がコーポレートガバナンスの分野において確たる優位性を維持し、ステークホルダーの皆様の期待に応えていくためにはどのようにしたらよいかを社外取締役全員で議論しました。その結果、社外取締役ミーティングを「hhcガバナンス委員会」に名称変更し、取締役会内委員会というガバナンスシステムの一つとして、その位置付けを明確にし、コーポレートガバナンスの体制と運用のさらなる充実を図っていくこととしました。

    hhc ガバナンス委員会」は、ステークホルダーの皆様の声を聞き、グローバルに展開されるコーポレートガバナンスに関する議論を機敏に捉え、当社のコーポレートガバナンスおよびビジネスに関する事項等について幅広く議論して、企業価値の向上に貢献してまいります。

    hhcガバナンス委員会体制

  • COVID-19 後の新秩序において公器としてのエーザイが果たすべき役割は何でしょうか?

    当社は企業理念において、患者様とそのご家族への貢献を第一義とする旨を謳っております。従って、新型コロナウイルスが蔓延する中にあっても、薬を必要とされている患者様が不便や不安をお感じにならないことが最も大切でしょう。そのためには、安全で高品質な薬剤を十分に製造・確保し、供給ルートに途絶を起こさない、工場を止めない、研究開発や治験の遅延を最小限に抑える、新薬承認作業を遅らせない、そしてCOVID-19の治療薬・ワクチンの開発に貢献することが求められます。

    また、当社は単に病気に対する治療薬をお届けするだけではなく、病気の予防・予知の分野にも積極的に取り組んでいます。その一つが認知症分野のエコシステムの構築です。これにより、認知症に対する正しい予防行動を理解し、習慣化するためのツールを提供して、病気にならないために何をすべきか、病気が発現してもどのように対処すべきかの情報を届けようとしています。そして、このようなプラットフォームを構築し、製薬企業、行政、医療、介護、診断薬、IT企業、保険会社などを基盤とするエコシステムの構築をめざしています。

    この実現にはAI、IoTの活用が必須です。このため、当社はDXを積極的に推し進めています。このたびのCOVID-19により、働き方を含めた社会の変革、組織の変革の必要性も明白となりました。認知症分野に限らず、会社内のどの部門においてもDXへの対応が必須となった現在、全社を挙げてスピード感をもって取り組む必要性が認識されました。取締役会として活動状況をしっかりモニターしていきたいと考えています。

      

新任社外取締役へのインタビュー

三和 裕美子

  

役 職:監査委員会委員、hhcガバナンス委員会委員、社外取締役独立委員会委員
兼務職: 明治大学商学部教授、日本大学商学部非常勤講師、全国市町村職員共済
組合連合会資金運用委員

  • 社外取締役就任の経緯を聞かせてください。

    2012年に明治大学国際総合研究所(MIGA)でコーポレート・ガバナンスの研究会が立ち上がり、私が研究会共同代表(もうお一方は日本CFO協会理事長の藤田純孝氏)を務めました。この研究会は、日本のコーポレート・ガバナンスのあり方を巡って、国内企業の役員、弁護士、公認会計士、研究者などが参加していました。そこに当社の現在の社外取締役のブルース・アロンソン先生がいらっしゃいました。研究会では、日本のコーポレート・ガバナンスのあり方、特に指名委員会等設置会社への移行が進まない中、監督と執行の分離のあり方、機関投資家から見た日本企業のガバナンスなどを中心に議論しておりました。私の社外取締役就任に際しては、彼の推薦があったと思います。

  • 新任社外取締役としての抱負を聞かせてください。

    私は1996年に明治大学に「機関投資家論」という科目の担当で着任いたしました。機関投資家論という科目は全国の大学でも珍しいです。日本の年金資金の運用が外資系運用機関に解禁になったのが1990年代半ばで、わが国においても、政策投資家ではない本格的な機関投資家の時代が来るという認識で、明治大学商学部が創った科目です。

    私は大学院の修士課程に在籍していた1991年から、米国における機関投資家がコーポレート・ガバナンスに及ぼす影響力について研究してきました。この研究に取り組んでから、すでに30年近く経過してきたことになります。この間、日本のコーポレート・ガバナンス、機関投資家の議決権行使やエンゲージメントの取り組みなどに大きな変化がありました。近年では、機関投資家のESG投資に着目して研究を行っています。

    エーザイを外から見た印象は、強力なリーダーシップ体制とコーポレート・ガバナンス優良企業というものでした。近年においては、社外取締役が機関投資家と直接対話を行っており、コーポレート・ガバナンスのトップランナーだと見ておりました。今後、ますますステークホルダーズとの対話、エンゲージメントが重要になってくる中、監督の役割を超えたSocial Valueを創りあげる取締役会という位置付けが大事だと思っています。私は自らの役割を、当社のSocial Valueを創ることに貢献する社外取締役と考えております。機関投資家や個人投資家との対話、ESGの問題などについて、研究者、そして女性の立場から経営の監督およびSocial Value創造に貢献していきたいと思います。

    当社の企業理念であるヒーマン・ヘルスケア(hhc)とは、患者様とそのご家族と当社従業員が共体験を通じて知識創造につなげる考え方です。このように、自己と他者の共体験の「場」を創るということは、多様なステークホルダーズとの対話に活かされていきます。機関投資家などのステークホルダーズとの対話の「場」は、さらなる企業価値を生むための相互作用の場としてとらえられます。このような「場」の活性化に貢献したいと思っています。

    また、女性の社外取締役として、多様性の実現にも高い関心を持っています。アメリカが圧倒的な経済力を発揮していた1950年頃、白人、男性のみが参加できるという意味で社会は極めて均質であったと感じます。所得税最高税率は約90%と非常に高く、このような社会においては、白人かつ中間所得層という画一的な人間像が主となっていました。この時期のアメリカ企業の取締役会を見れば、その画一性がわかります。この背景には、当時のアメリカ企業にはとっては本格的な価格競争が存在しなかったことが挙げられます。

    その後、Japan as No.1と言われたように、アメリカの製造業は価格競争が本格化してからわずか20年足らずでそのNo.1の地位から降りることになります。皮肉なことに、経済低成長の時代になると、労働力の流動化や「働き方改革」が進み、女性の社会進出が促進されます。このような中、欧米諸国に遅れて日本でも多様性が注目されてきました。経済が低成長の今、多様な価値観から生まれる「知」が必要とされているということだと思います。私たちは、地球環境や安全な生活を犠牲にして、経済成長を遂げてきました。また経済成長に関わらないことは後回し、もしくは放棄してきました。この結果もたらされた現実に、今私たちは直面しています。これがESGの背景にあると思います。

    つまり経済成長=お金の成長では測れなかった価値の創造が今必要とされ、それは多様な価値観を持つ人との対話から生まれるということだと思います。機関投資家が企業の長期的リスクを認識するように要求し、企業は統合報告書の対応、ESGマテリアリティの特定など、ESG対応を迫られています。しかし、その根底にあること、言うなれば多様な価値観から生まれる知の創造を理解すべきだと思います。

  • COVID-19 後の新秩序において公器としてのエーザイが果たすべき役割は何でしょうか?

    先ほどの多様性から生まれる価値観の話と関連しますが、コロナ禍の中で私たちは、「お金の成長」では解決しない問題を認識しました。このような認識を反映して、海外の機関投資家やNGOは気候変動問題やビジネスと人権問題に対して、従来よりもさらに大きな関心を示しています。

    上場企業の株式は流通市場で売買されますので、いわば匿名の誰かが株主になります。また機関投資家の背後には究極的な資金の出し手である個人がいるわけですので、この意味でも匿名の誰かが株主になっているのです。つまり、企業の株主は広く一般の人々であり、企業は公器と考えられるのです。

    公器としての当社は、今まで以上にESGの問題に取り組む必要があると思います。新型コロナウイルス感染拡大により雇用の問題が世界的に議論されています。当社はグローバルな企業ですので、世界的に雇用問題や従業員のエンゲージメントの取り組みを強化するといったことを考えていく必要があると思います。また、製薬企業として新型コロナウイルス感染症のワクチン開発について世界的な協力体制に参加することを表明していますが、このような世界的な動きに当社が果たす役割は非常に大きいと思います。